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私でいられる、お気に入りの場所

「自分のお気に入りの場所を教え合おう」というアクティビティ(活動)をTOEC自由な学校で行った。「ここが静かでいい」ミズキ(3年生)はいつも毛布やダンボールで住み家をつくって遊んでいるテーブルの下にいきなり潜り込んだ。

ちなみに、このアクティビティは環境教育などでよく行われていて、自然や空間とのつながり感を体験したり、気持ちに元気や安心を取り戻したりすることを目的としている。たいていウロウロ探しながら何とか発見したり、なかなか見つからないで困ったりしてしまうことも少なくない。

ところが自由な学校の子らの反応はまるで違っていた。考える間もなく次々と紹介が始まる。

ミト(同1年生)はカラーボックスの最下段。見事に体をギュッとはまりこませ、「ねっ、ピッタリでしょ」。ソウタ(同2年生)はヤマモモの木を少し登ったところ。枝に腰を下ろすと、太い幹が背もたれ、別の枝に足がのせられ、どれもいい具合だ。そして見晴らしの良いこと。ホダカ(同1年生)はカキの木の下。色とりどりの葉っぱが落ちているところがお気に入り。ここなら葉っぱとたくさんお話ができるそうだ。

ほかにも水の流れていない用水路に横たわる。フリースクールと農具小屋のすき間。田んぼから畑への登り口などなど。広大なところ、高いところ、狭いところ、いったいいくつあがったろう。

どの子も紹介したい大好きな場所があふれてくる。しかもどれも適当に言ってはいない。その場所が大好きな理由が明確にあり、いかにその場所がすてきな場所かを目を輝かせて伝えてくるのだ。

心理学者A・マズローは人間の欲求を段階に分けて説明している。まず最初に「生命維持の欲求」。それが満たされると「安全の欲求」。それが確保されると「帰属、所属の欲求」が出てくる。私が私でいられる居場所を求めているのである。そしてそれが満たされて初めて自分を認め、人からも評価されたいという「成長」「自己評価」を求めることになる。

現代人は居場所を見失いがちだ。教師をしている友人から、休み時間のたびトイレに逃げ込む生徒や、自家用車にひきこもる教師の存在を聞いたことがある。居場所を見失うと、自己を純粋に成長させたり、他者からの評価を素直に受けとめられなかったりするので、おのずとそれに振り回される。

フリースクールの子どもたちが健やかな理由は、まずここが大好きで安心な居場所になっているからだろう。

さてあなたにとって私が私でいられる居場所は?