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夢中になる、美しい時間(仲本桂子)

執筆:自由な学校スタッフ・仲本桂子(プー)

この前大学生が来て、子ども達が描いた絵を見て「いいねー」と褒めてくれた。「どういうふうにこの絵を描かせたの?」って聞くから一瞬驚いた。「何にも教えたわけではないし、描かせたわけでもないよ」と答えた。

例えばこの絵、沖縄旅行の後、魚の辞典をめくっている時「あ、この魚見たね」「僕も見たー!」とわいわい盛り上がって、ふと「じゃあ絵の具で描いてみる?」と聞くと「描く!」となって描き始めた絵です。

どちらかというと邪魔しないように心がけている。例えばこれを描きたいとみつけた時、本人もわからないけど生まれてくるもの「おーきれいだ!」と思いながらできたものを見せてもらっている感じです。

そういうふうに生まれてくるものを表現すると、それがすごくかわいい絵だったり、のびやかだったり、どこかユニークだったり、他の誰にも描けないような絵だったりするわけです。それをただただ感じてる、味わっている、「いいねー」ってそこに関心を寄せているだけなんです。

ここ自由な学校で夢中になっている子どもの姿は美しいんです。その美しい時間を保証したい。

また、ある日筆を持たせたら、いっぱい字を書きたがって、そしたら思いついく字、見たことのある字を書き始める。1年生で習うとか習わないとか関係なくなる。でもその子なりの足跡があって、筆を持つ、筆で書くということを喜び、面白がっている時にちょっとここの払いが違うとか、ここはまちがっているとか言えなくなるんです。例えば、習字には左下に名前を書くという書き方があるし、はねやはらい、止めるなどの決まりごとも多い。そういうのもみんな飲み込まれていく。

指導しないんじゃなくて、今は言わないでおこうって思うんですよ。伝えたくなる時がきっとくる。タイミングがあるんですよ。

もっと大事なものがここにあって、書くことが楽しいだったり、あれこの字ちょっとおかしいと自分で気づいたり、これはうまくできた!と自分で評価する。他人と比べての評価で生きない、自己評価で生きる生き方を学んでいると思うんです。好きな字を自分で思うように書く、字もいっぱい覚え、漢字を覚える。

また、時には4年生で習う漢字を「全部みんなで書いてみよう!」ってスタッフプランとして私達も提案するし、子ども達も「やろう!」って乗ってきますよ。また、お互いにテストを作りあうっていうことをしたりもする。子どもが子どもに問題を作るのね。容赦なくバツとかつけながら「もっとがんばりましょう!」などとコメントしたりもする。百ます計算などワーッとやったり、思いつくことはそれなりにやるんですよ。

子ども達本来の欲求があるんです。子ども達は成長もしたいし、楽しくもやりたい。誰かがやっていることに刺激されてやることもよくあります。大事なことは美しく流れる時間と、常に子ども達が主体的(意欲的)に取り組んでいるか?ということ。

「こんなやり方するとわかるんだね」「こんな風にすると楽しいんだね」、逆に「やられるといやな気になる」とか…。子どもと同じで、『学び方』を私たちも学んでいるんです。