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TOEC、これまでの流れ(インタビュー)

・1985年、自然スクールTOEC誕生

きっかけは、学校という枠組みの外で子どもと関わろうと思ったことでした。僕はもともと教師になりたかったんですが、自然の中でやろうとしていたので、教室の中で席について…という学校は直感的に違うなと思っていて。

授業のやり方や価値観にも疑問があったので、学校以外のところで子ども達とキャンピングや大人を対象にしたカウンセリングを始めたんです。こうして自然スクールTOECはスタートしました。

TOECという名前は、Tokushima Outdoor activity Education Center の頭文字からつけました。

人との関わり、自然との関わりを通して
あなたがあなた自身をとりもどし
あなたがあなた自身になるところ。

そんな場所になるように、そんな願いをこめています。

・1990年、幼児フリースクールをはじめる

自然スクールの活動を続けていたある日、アメリカで僕らのやっているキャンプスタイルと同じところがあると聞いて。友人から紹介してもらい、カール・ロジャースの理念を基にしたオルタナティブスクールで、スタッフと同じようなことをさせてもらうという体験をしました。
※アメリカの臨床心理学者。来談者中心療法を創始した。

そこの子ども達が生き生きとしていて、すごく学んでる。で、明日もまた来るよと当たり前に別れていく。それまでもキャンプなどの活動は継続的にやっていましたが、毎日通うというのはなかったんです。

だったら、自分がイメージした学校を作っていけばいいんだと思って。そこにもう少し自然の美しさとか、米作りをはじめとした農業だとか、日本の文化を加えるとすばらしいものができるんじゃないか。

そう思って、まずは幼児教育からと考えて、TOEC幼児フリースクールをスタートしました。

・1995年「自由な学校」週末版への広がり

幼児スクールを何年か続いているうちに、親御さんたちから「小学校は作らないのか」と言われ始めました。ただ、学力の問題や無認可ということでの行政からの圧力もあるでしょうし、正直かなり躊躇がありました。それでも、まずは週末だけでもやったらどうかと言われて、1995年に「自由な学校」週末版がスタートしたんです。

自由な学校では、いろんな文化を持った場所や、絵や工作、料理などその道のプロに会わせてあげることを大切にしました。その人たちの一流プレーを見せることが人を成長させる一番の動機になるのではないか。一流のプレーや生き方を見て、自分と比較し、それを縮めていく。

子どもはそんな「よりよき大人」になろうとする力を元々持っているのではないかと思います。

人に会わせる、その場所に行く、固定したカリキュラムにとらわれない、子どもの学ぶ意欲を壊すことのないような学校を作ろう。そのスタートとして、週末だけの学校が始まりました。

・1998年、いよいよ「自由な学校」通年版へ

そうこうしているうちに、1995年の阪神・淡路大震災、オウム真理教事件、1997年の酒鬼薔薇聖斗事件など、世の中では次々と事件が起こります。モノや便利さを追い続けてきた社会や教育の在り方に、強烈なメッセージが届いてきたわけです。

この期に及んで躊躇するのはいさぎよくない。これは研究会ではなく、実際にフリースクールを実践してきた自分達にもひとつの責任があるのではないか。そのことに勇気を持って手を挙げることは、僕らに今できる一番大切なことなんじゃないか。

これは僕の運命の道と言うか、TOECに来ているスタッフ達の神話というか。道は明らかに見えているので「今だ」ということで通年版をはじめました。通年の学校を決意したのには、こういったかなり外的な動機も加わっています。

・「自由な学校」の今

木登りはできるけど鉄棒はできない、馬とびはできるけど跳び箱はできなくていいのか。これらはひとつひとつ僕だけじゃなく、親御さんの教育観や人生観に戻ります。うちに来なかったら多分悩まなくていいことだと思います。

公立の学校には安心感のレールがあるんです。何か責任を取ってくれそうな、事実とってくれるかどうかは別として、それにも価値があるとは思うんですよ。反社会的なことをやっている気持ちは毛頭ないんで。

でも、産業社会の次の時代をどう生きていくのか考えたとき。調和的で、共生というのか、非暴力な社会づくりに貢献できる人間、外側ではなく内側が豊かな人間、本来の心の神話というか「自分自身を生きる」ということをたどっていくならば。

道をちゃんと見つけたわけではないけれども、この道を親御さんもスタッフも一緒に語ろうとスタートして、今まさにその土俵で、スタッフも子ども達も試行錯誤して日々過ごしているわけです。

(インタビュー聞き手:佐藤紀与美)