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大人こそ「自分を取りもどす日」を

今日は親子でフリースクールの日。モーニングミーティングの口火を切ったのは、スタッフのシーサーだ。

「早起きしてメチャクチャ感動しました。ちょうど朝日が昇ってきて、しかも満月はまだ沈む前で・・・。えーと西だっけ東だっけ?とにかく両方あったの!」

「おいおい、太陽も月も昇るのは東、沈むのは西よ」と、すかさず何人もから、つっこみを入れられるシーサーは「あ、そっかー」と屈託のなく高笑いしている。フリースクールは親も子もスタッフも、誠に垣根のない付き合いをしている。

親子でフリースクールとは、参観日のようなものと言えるが、決定的にちがうのは、親が子どもの様子を見る会ではなく、親もフリースクールの一日をそれこそ子どもになって体験してもらうところなのだ。

この日を楽しみにしている親も少なくなく、アカネ(5)の母ピッピは、思いっきりどろんこ遊びをやるために、シャツの下に水着を着込んでくる熱の入りよう。頭からつま先まで全身どろんこにしておおはしゃぎ。まったくもって「お見事」である。

モモコ(6)の母、サンキュは、懸命にのこぎりをひいている。真剣な表情から集中ぶりがうかがえる。その隣ではトモヤ(6)が、片足で竹をふみしめ、手早くのこぎりをひいている。公平に見てもトモヤの方が数段、様になっているのは日々の活動のたまものだろうか。

マナミ(6)の母ポコちゃんのやりたいことは焼きイモと昼寝。その横ではトモヤの母、ナカちゃんがウクレレを練習中。たどたどしい音が心地良い。こんなゆったりモードも、得難い空間だ。マナミの父、谷パパとユウタ(6)の父マークが、ペンキの落ちたフリースクールの看板を塗り直してくれた。気になりつつ、手がつけられずにいたので、なんともありがたい。しかも、楽しくやってくれているから、素晴らしい。

フウナ(6)の母リョウちゃんが持参した阿波踊りの笛を吹き始めると、太鼓をたたく子が出てくる。青空に抜けていく音が爽快だ。合わせてサオリ(7)とフウナが小気味良く踊りだす。これがまたうまい。しだいにのってくる2人。手拍子もわいて、良い雰囲気。

誰からも強制されることなく嫌なことは嫌、やりたいことはやりたいと言える場で、自分の内なる声に沿って活動した一日。

何かと忙しく日々を過ごし、自分の気持ちを後回しにしがちな大人にとって、自分を取り戻す絶好の機会になったようだ。晴れ晴れとした表情で、すっかり優しいまなざしのお父さん、お母さんになった。

フリースクールを必要としているのは、本当は大人の方なのだろう。満開のコスモスまで一斉に笑っている。