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場の流れを感じて、ゆだねること

野鳥のミサゴがTOECフリースクールの前を流れる岡川の上を何度も旋回している。時折、水面ギリギリまで舞い降りては、また空高く浮上する。「狙ってるな」と思いながら、周りに居合わせたお母さん方にミサゴを指さし、そのことを教えた。まさにその時だ。「バッチャン!」と水音を立てて、ミサゴは一直線に川へと突っ込んだ。

「ほらね!」と予想的中で、得意満面の僕。そんな僕をほったらかしにして、お母さんは「ウワァー」と驚嘆しきり。あんまり驚き過ぎて、ミサゴの飛び立つところを見逃してしまったが、きっと大きな魚をわしづかみにしていたことだろう。あぜ道はヒガンバナの赤。そしてコスモスがゆれている。秋の光景だ。

アカネ(5)がまだ少々青い柿を食べながらやってきた。「カラスが実を食べに来るけん。タツロウはよう『オドシ』を取り付けんと」とハルヒサ(6)がせかす。オドシとはカカシやポリ袋を取り付けて、鳥を追い払うもののこと。ハルヒサは、柿の木にしょっちゅうカラスが来ていることが心配でたまらないようだ。僕にしたら「オドシを取り付けるよう」なんて言ってくる6歳がいること自体が愉快で笑えてくる。

夕方、トラクターでフリースクール前の田んぼを耕す。トラクターのすぐ後をシラサギが並んで歩いている。耕された土から飛び出してくる虫をついばむためだ。見慣れた光景だが、この奇妙な共存風景も笑える。

翌朝フリースクールに到着すると、ふかふかに耕された田んぼでは、たくさんの子どもがそれこそ転げ回りながら、走りに走っていた。ペーターやシーサーらスタッフも含めて皆裸足だ。これがまた気持ち良い。

全員集合して行われるモーニングミーティングの時間はもう過ぎている。スタッフのスガはそんなのおかまいなしに、登校してきた子どもたちを次々と「ほら行っといで」と気前よく田んぼに送り出す。「こんなに気持ち良さそうなふかふかの田んぼが広がっているんだものね。特別よ」。見守るスガも自然とニコニコ顔だ。

場の状況や流れに沿ったこんなフレキシブル(柔軟)なところも子どもが伸びやかに瞳を輝かせる秘訣だ。場の流れ(プロセス)に沿うには、居合わせるスタッフの流を読み取る力、感じる力が必要だ。加えてそれを調和的な活動として、デザインしていく役割もある。

フリースクールは自然や個々の好奇心、関心を起点に遊学を進めるところだ。学びのプロセスを止めない、開いた感性が常にスタッフには問われている。

秋の空がどこまでも高い。